柚香光様、ご卒業おめでとうございます!
とうとう、この時が来てしまいました…。
いや、いつかは来るものだなんて、そんなこたぁ重々わかっていましたけれど。
実際来てしまうと、もう「寂しい」とか「悲しい」とか、そんな一言にはとてもとても収まりきらない、スーパー激重感情が渦巻いてしまいます。
と、そんなことを言い始めるとキリがないので、
今回は、ひとまずはシンプルに、作品の感想を、いつも通りに語りたいと思います。長いよ。
※“ネタバレ”というほどの衝撃展開がある物語ではないので、あまり気にせず書きます。お気を付けて。
※後半、シナリオや演出に関して、マイナスな感想を書きます。
※東宝と千秋楽映画館LVの2回分の感想を、ごちゃ混ぜで書き連ねますので、ご了承をば。
全体感想
ざっくり全体的な感想を言うと、「駄作ではない」というのが正直なところです。
宝塚不名誉ジンクスの1つ、「退団公演のオリジナルはトンチキ」というのは、ファン歴長くないなりにも知っていて、今回もどうなるかな~~~とハラハラしていたのですが。
恐れていたよりは、ずっと良かったです。
(因みに自分の評価基準としては、「黒豹の如く」を数年前に映像で観たはずが、何から何まで一切記憶がない、という感じです)(それはそれですごいと思うけれど)
とにかく柚香光に、コンテンポラリーやらジャズやらラテンやら、ガンガン踊らせて、「ザ!男役!」な燕尾、ロングコートとハットを着せたと思えば、2幕にはちょっと薄汚れた格好の闘う男をやらせて。
最後の最後に、これでもかと「最後の姿」をてんこ盛りにしてくれたのは、本当にありがとうでした。
まどかちゃんも、とにかく可愛いプリンセス系だったのが売りだった初期から、「こーんなに成長しました!」と言わんばかりに、佇まいも心意気も素敵な大人の女性で、
それこそ、宙トップ時代から応援していらしたファンの方は感無量だったろうなと思う。
個人的に、退団公演で、トップと次期トップが対立せずに終われる方が好きなので、その点でも好みだった。
個人的MVP
まさかこんなに刺さるとは…。正直、観劇前はノーマークでした。
はい。綺城ジョルジュです。
(キャラクターという観点で言うと)もうジョルジュのことしか考えられない。本当に辛い。
まあ、元の性格からやや難があるタイプの人ではあるけれど、
それを修正するタイミング無く、がっつり道を踏み外してしまった姿には、「悪役」という言葉では片付けられない虚しさを感じた。
ポジションとしては「悪役」なんだろうけれど、そう呼ぶにはあまりにもまっすぐすぎるというか。あくまで「悪意」はないんだよな、彼。
彼にも“誰か”がいたら、きっとちがったんだろうなとは思うんだけれど、それはもう今後何をどうしようと「if」でしかないという…虚しい…。
そして更に、彼の今後の展望が追い打ちとなるわけで。
フリッツは、言うても国防軍だったので、まだ希望はゼロではないかなと思えるんだけれど、
ジョルジュは、がっつりナチスに両足突っ込んでしまったので、まず数十年は幸せとは縁遠い生活になるでしょう。
あの末端で実刑が下るかどうかはわからないけれど、なかったとしても、永遠に、世界中から後ろ指さされて生きていくことになるのかな、とか思うと…。
ほんと、誰か傍にいてあげて…という気持ち。
あの高慢で高飛車だった彼が、膝をついて、頭を抱えて「うわああああ」と地面に突っ伏す姿、本当に辛かった。
あか様、以前は結構、優男なイメージあったんだけれど、こんなに拗らせ男子が似合うようになって帰っていらしたとは…!(花凱旋後のあか様は初でした)
長身ですらっとした男の拗らせには、“いかにも”な小男からは決して得られない旨味がありますからね。(※弊社調べ)
いやそれにしても、脚が長い。
バーカウンターと腰が同じ位置にあったんだけれど、どういうこと…???
魅力的なサブキャラクターたち
まゆぽんコンラートさんの悪役の憎たらしさは、もはや1つの“芸”と呼んでいいのでは、と思うレベル。
もう一直線に嫌なヤツだし、下衆だしで、いっそ清々しい。というか、コンラートってナチス以前の問題として、普通に人としてド畜生では…?と思うのは自分だけだろうか。
「振付のー…」(※東宝楽)に悪意しかなくてヒェッした。マージで歌以外はどーでもいいんだなぁ…。
湖春イヴちゃん、めっちゃ可愛い〜〜!
よくある「ショタ」(少年なんだけれど、個人的にはちょっと可愛すぎるな…って感じちゃうやつ)ではなく、「少年」感があって、とても良かった。
あと、柚香マルセルとの身長差が、リアルな中学生くらいと大人のお兄さんって感じで、めっちゃ和んだ。肩組むと、すっぽり収まっちゃうあのサイズ感。むしろ湖春ちゃんじゃなきゃできないのでは。
アコーディオンはまさか生演奏ですか?持っているだけで重そうなのに、すごい…!
一樹ぺぺさんはもう、ただたださすが。
大好きなんですよね、一樹さん。舞台に1人いるだけで、彩りの幅が広がる方だと思っています。
ぺぺ自身が、決してしっかり者ではない、むしろ息子に尻叩かれているようなゆるゆる親父だったのもあって、良い癒やしだった。
ただ、1幕ラスト…。
アホか!!!!それだけはやるな!!!!!!
人の親が、感情任せで行動すな!!!そんなことよりも大事なのは、息子を守ることだろうが!!!何びっくりしてんねん、そら捕まるわドアホ!!!!!!!!
とは思ったよね。2幕頭の「そらそうなるやろ」ランキング1位。
「私にそんな思想はない!」じゃないのよ。その有無を決めるのはあなたじゃないのよ。
好きだった演出
とにかく、幕開け早々のレビューショーは、さすがでした。
しかも、あのトップハットにステッキに燕尾に、晴れやかな笑顔の柚香光…それ何てジェリー・トラヴァース???まさかまたお会いできるとは…ありがとうございました。
カトリーヌが、昔観たレビューを「夢の世界」と表していたけれど、その気持ち、わかる。
こんなんいきなり見せられたら、そらもう脳焼かれるでしょうね。
個人的に、レインボー セット・シャルマン好きです。衣装の力も相まって、本当にでかい。オモロい。緑の大弥くんかぁいいねぇ。(贔屓目)
その他にも、ジャズだのラテンだの、次から次へと踊る踊る…。
“あの”柚香光の退団公演が1本物で、「えぇ~ショーは~…?」となった大多数のファンの思いに、1本物で出来得る最大値まで、“ショー”を詰め込んでくれたなと、小池先生のガッツを感じた。
ちょっとしたところだと、「ヌーヴェル・アルカンシェル」の曲中、
最初に「ヌーヴェル・アルカンシェル」と歌ってから、銀橋の先にぱぁっと照明がついていくところ、
正に、「新しい道が開けた」瞬間を表しているようで、とっても素敵だった。
(ご本人たちも言及していたけれど)最後の最後で、マルセルとカトリーヌが、銀橋を上手から下手に渡っていくのが、モロに「元禄バロックロック」と同じで、
たまたまだったら、すごい運命的なめぐり合わせでときめくし、
意図したものなら、小池先生の“わかり具合”に拍手。
さて。ここからは、予告通り、マイナス感想になります。
毎度の如く、刺すところは思いっきり刺すタイプの人間なので、
こういうのでモロにダメージを受けてしまう方は読まない方がいいです。お気を付けて。
※主に、シナリオや演出方面の話になりますので、ジェンヌさんご自身への批判はありません。
「フリードリヒ・アドラー」という幻想
はい。永久輝フリッツさんです。
皆さん、どう思いました…?
ぶっちゃけ、どう見ればいいのか、よくわからない人だったのが、自分の正直な感想です。
表面だけさらっと見る分には、「ナチスにもこんな人、1人くらいいただろうな~」「善い人だな~」で済むんだけれど…。
よくよく考えてみていると、かなり罪深い人だと思う。
まあ、悪い人ではない、悪意はないということは間違いないんだけれど。
ナチスという巨悪相手に、確証のない自分の思い付き(「きっと兵士の気分転換になる!」って言ってるけれど、あくまで「きっと」)1つで、武力をもたない一般市民を巻き込むことの重大さを、あまり深く考えていなさそう。しかも、自分は巨悪側。
「実はナチスなんてものすごーく嫌で、本当はめっっちゃくちゃ嫌々軍隊に入った」という風な表現があれば、まだ腑に落ちたと思うんだけれど、それすら無い。
そんなだから、彼がアネッタに惹かれる理由は、まあわからなくもないんだけれど(超可愛いから)、
アネッタが彼に惹かれる理由がさっぱりわからない。
しかも、ちょっとした恋心ならまだしも、おそらく数年はまともに面会できるかどうかも怪しい状況に、「私、いつまでも待ってるわ!」と力強く言わせるほど。
せめて、アネッタとのロマンスと、「ジャズやろうぜ!」の順番が逆だったら、もう少し説得力はあったかもしれない。…たぶん、おそらく、メイビー。(まあそうなると、物語の“承”が遅くなりすぎちゃうから、難しいだろうけれど…)
しかも、あんだけやらかしてて大したお咎めなしってのがまた…。そこだけ急に都合良いな~~~~~。
逆に何したら、明確な罰を受けるんでしょうね。ナチスってそんな緩いの…?
よっっっっっっっぽどいいとこのお坊ちゃんなのかなぁ。(見た目があのロイヤル感だし)
ひとこちゃんさんの芝居力がなけりゃ大事故だったろうな…と思う。
というか、ひとこちゃんさん、よくぞこんな腑に落ちんキャラクターを消化してくださった…ありがとう。
(余談ですが、「ナチスにも善い人はいた」説は、近年否定されつつあるそうです)
「ナチス」の軽視
これはSNS上でもかなり言われていて、何なら、それ故この作品が無理と仰るご意見もあった。
いや、本当に軽い。自分もそう思います。
個人的に、ナチス関連には何かと縁があって、映画やら資料やら、いろいろ観てきたのですが、間違いなく、今まで観た中でダントツに軽い。
(暴論かもしれないけれど)「平和ボケした日本人が書いたんだろうな~」って感じ。
前述の通り、フリッツが、「エンタメを規制するなんてナンセンスだ!」と言って、ナチスの方針に反発するようなことをしでかす割には、
あくまで軍隊から離れようとはしないし、頭がエンタメ一辺倒で、「自分たちの所属するコミュニティがどんな凄惨なことをしているのか」という現実に一切触れないせいで、
自分勝手でダブルスタンダードな偽善者に見えてしまう。
(いや、彼は「善いことをしよう」としているわけではないから、偽善者ですらないのか?)
エンタメのためにそこまで熱くなれるのなら、もっと目を向けるところがあるんじゃない?
っていう彼の思考回路が、“善い人”風に作られたキャラクターのはずなのに、いっそ絵に描いたような当時のドイツ人って感じがした。
コンラートも、確かに悪役だけれど、前述のように、そもそもの人間性が終わってる(言い方)タイプの悪役なので、SSである必要性がない。SSとしての恐ろしさ、悪どさがない。
まあ、タカラジェンヌにそこまでのド悪党はやらせられんのかもしれんけれど。
ところで、最後どうして爆破は中止になったんだっけ…?
自分の記憶では、「とりあえず中止」という話しかなかったように思うのですが…誰か思い出させてください。
惜しいサブキャラクター
魅力的な人もいた反面、惜しかったのも、このサブキャラクター枠。
特に、聖乃イヴ。
勿体ないどころじゃないくらい、勿体ない。え、3番手…だよね…?
“ほのかちゃん”の印象はもちろんあるんだけれど、“イヴ・ゴーシェ”としての印象が皆無で、ただただナレーターでしかないのが本当に残念だった。
しかも、ほぼダンスなし。衣装チェンジ一切なし。1本物なのに…!
がっつり一緒に過ごしてきたトップさんの退団なのに、目を合わせることすら碌になくて、かわいそうとまで思う。
似たようなキャラクターだと、「眠らない男」のナポレオン三世(大好きな天寿さん)が浮かびますが、
あれはナレーター枠と言えど、「ナポレオンの一生」と「ナポレオン三世の心の成長」を同時進行で描いた物語だったので、むしろ裏主人公的な立ち位置で、かなりおいしいキャラクターだった。
あんなに素敵なナレーターが描けただけに、今回のイヴの扱いの雑さにびっくり。
はなこさん、大弥くん、希波さん、美羽ちゃん辺りの、これからの花組を担うであろうメンツも、
名前があるだけでほぼモブだったので、残念。
今回で退団のみこちゃん、みさこちゃんも、終始どこ???状態。ほってぃさんはまあ…ギリギリ。
ただ、美羽コゼットと希波兵士さんは、ほーんまにお人形だったし、
俺たちのピエール(大弥くん)をおもくそぶん殴ったSS兵は許さん。(過保護)
宝塚花組「アルカンシェル」開幕 柚香&星風のトップコンビ退団公演 - 産経ニュース (sankei.com)
そんなわけで、「アルカンシェル」感想でした!
次は、サヨナラショー+大好きな柚香光様についての諸々を書きたいと思っております。