日常/非日常

びっくりするほど雑食

「ヴィンチェンツォ」感想

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「悪と闘う法廷モノかぁ…全然好みではないんだよな…」と思ってたんだけど、面白いという話をやたら聞くので、1話を観た。

全然法廷モノじゃないやないかい。

面白かったです!!!!!

ので、いつも通り感想をば失礼致します。長いよ。

 

※一部、完全なネタバレと、ヲタク特有の激重感情を含みます。お気を付けて。

 

 

 

ダークすぎるダークヒーロー

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「悪を裁く悪」と聞いて、「あぁ、義賊的なヤツかぁ~まあよくあるわな~」とか思ったのだけれど。

そんな甘っちょろいモンじゃなかった。

もしかしたら、彼の中に、人間的な善悪の線引きは、そもそも存在していないのかもしれない。善いか悪いかは、彼の判断基準ではなく、自分の利になるか否か。それだけ。そこが義賊とのちがいのように思う。

だからこそ、決して“悪い人”ではない。

いっそ首尾一貫としているし、迷いもないし、下手な善人よりずっと頼りになる。味方なら。

そんな印象を受けたキャラクターだった。

 

正直、「このキャラクター設定なのに、ソンジュンギさん…?」とは思った。

100%東洋産のその童顔で、イタリアのガチマフィア相手に上り詰めただなんて、ちょっとファンタジーすぎないか?

と、思ったのだけれど。

観始めると、確かに、柔らかいお顔立ちだけれど、どこか影があるというか、目が笑ってるようで笑ってない感じが、キャラクターにぴったりだなと感じるようになった。あの目はちょっと怖い。西洋人にはないタイプのポーカーフェイスだと思う。

それにしたって、ほんっと童顔…と思ってたんだけれど、頭取メロメロ作戦(言い方)の時は、急に年相応に見えた。それでも可愛いかったけど。

 

イタリア語の上手い下手は、自分にはあまりわからないけれど、ブチギレるとイタリア語でまくし立てるのはすごい好き。

イタリア語って、本当に歌うようにしゃべるんですねぇ。オペラがイタリアで発展したのも、わかる気がする。

 

ポーカーフェイスとはいえ、やっぱりこういうキャラは、仲良くする気なんてなかったのにいつの間にか…っていうのが醍醐味だよなぁと、ひしひしと感じた、クムガファミリーとの関係性

ここに来なかったら、彼らと出会わなかったら、悪いやつを煽るためにプールでバタ足なんてしなかっただろうし、霊媒師の振りなんかして頭にお花飾ることもなかったんだろうなぁ。

嫌だ何だと言いながら、割りと楽しそうで。

 

ところで、チャン兄弟以外みんなずーっと「ビンセンチョ」って呼ぶから、うつっちゃったじゃないか。どうしてくれる。

 

 

お前何なん

※序盤の大ネタバレを含みます。5話まで到達していない方はお気を付けて。

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いやもう…ほんと………何なん????(何なん)

 

初見で、

「ワー!ガタイが良くて身長もあって髪ふわふわでにこにこのワンコだー!大型犬だー!わーい!」

と思った気持ちを返してほしい。

いやごめん、ウソです。そのまま持って行ってくれ。一生返さなくていいよ。

 

まあ、何の役に立つキャラでもないのに、クレジットは上位だし、役者はビッグネームだし、やたら顔は見せてくるし、何かあるなーとは思っていた。

彼が本物の会長でーす!と言われても、その時点ではまだ「あぁ〜なるほどね〜」程度だった。よくあるっちゃよくある展開だし。

 

何って、あの狂気でしょう。

えっ……………何なん????(リプライズ)

サイコ犯罪者の多い韓国ドラマ界隈だけれど、彼はその中でも、ずば抜けて特級のサイコだったと思う。

作中での言及通り。あれは人間じゃない、怪物

 

純度100%のサイコとあって、悲しい過去だとか「悪の理由」とか、そういう人間的なものが本当にないのも良かった。

不倫がどうのとか言ってたから、それが父親殺しの動機かと思いきや、全然関係ないし。彼にとって家族とか仲間とかは、愛もなければ恨みもしない、ただの「それ」でしかないのでしょうね。

いちばん鳥肌だったのは、あまりにも唐突な「中学と高校で、同級生を4人殺した」だった。は…………?怖。

 

思ったんだけれど、これ、テギョンさんのファンの皆様はどうだったんだろう?

衝撃はもちろん大衝撃だっただろうけれど、ショックすぎて観られないって方もいそう…。そのレベルで振り切ってて素晴らしかった。

個人的には大好きです。大歓迎です。

推しがこんな、きゃあきゃあ言いながら人を殴り殺したり、目を真っ赤にしながらぼたぼた涙溢して相手を睨んだり、豚の血を頭から引っ被ったり…考えるだけでゾクゾクする。観たい、観たすぎる。いつかやってくれ。

 

ただ。

確かに、歴代稀に見るハイレベルのサイコで、強烈な存在だったのだけれど、それ故に、後半大人しくなってしまったのが惜しかった。

大人しくなったというか、大人しく感じるようになった

彼の狂気に慣れてしまった。

どんなにインパクトのあるものでも、ずーっと見てると慣れるんだよね。「あ、ここキレるな」って読めちゃうようになるし、表に出てきたことで、行動に制約も増えてしまったし。

すごい雑な言い方で申し訳ないけれど、正に「出オチ感」というやつ。

 

あと何よりも、闘う相手が悪すぎた。

これは後述します。

 

っていうか、自分の命は結構大事なのかぁ〜〜そうかぁ〜〜。

純度100%のサイコなら、命乞いとか見たくなかったなぁ。一気に凡人になってしまった。そこまでも振り切ってほしかった。

最後の瞬間まで、サイコでいてほしかったなぁ。

 

 

というわけで、前半では「お前だよ」大賞の筆頭株だったのだけれど、後半にいくにつれ、惜しくも失速してしまった。

 

その代わりに。

爆速で追い上げてきて、栄えある(※ない)大賞を手にしたのは、この方。

 

 

「お前だよ」大賞

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お前だよ〜〜〜〜〜〜(滝涙)

お前だよ!!!!!!!!!!

 

※特級のネタバレと激重感情が含まれます。お気を付けて。依怙贔屓レベルで長い。

 

正直、前半はそこまで印象的でもなかった。

「おぉ、クァクドンヨンさん今度は悪役かぁ!」と思ったくらいで。

兄ちゃんにいいように使われてるのも、あぁなるほどって程度だったし、

影で「チキショー」って言ってたのは、なるほどここも対立するのね、とか思っただけ。

 

あれです。

滝行(言い方)の直後に、ヴィンチェンツォを見て笑った時。

あそこで「あれっ」と思って。

後日の「ヴィンチェンツォに会いたい」で、「うわ!!!!!!!」しました。

「そっちか!」と。

てっきり、兄弟は兄弟でバチバチやって、あくまでそれはそれ、対ヴィンチェンツォとは別軸の、三つ巴的な感じになるかと思ってたのだけれど、いや、自分の心が汚かったわ。その手があったわ。

 

もうそこからは爆速で彼の存在感が増していって。こちらの内面にも浸透していって。

少しずつっていうより、結構急に明るい面を見せてくるのがまた……。そっか、これが本来の君だったんだね。

 

一緒にホッケーやってさァ〜〜〜うれしそうに1人で滑ったりしてさァ〜〜〜。何あの可愛いの、聞いてないんだけど???

「빈이형」って…(滝涙)

彼はずーっとこういうのに憧れていたんだなぁと、兄さんに、認められるとか会社を任されるとかじゃなくて、ただ普通の「兄さん」を感じたかったんだなぁと思えて、本当に辛かったし、良かったねぇと思った。

だって、異母兄弟とはいえ、大金持ちのお坊ちゃんとはいえ、呼び方が永遠に「형님」て。そりゃ気が休まらんわ。

 

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心を開いていけばいくほど、彼がいかに「普通の人間」かが浮き彫りになっていった。

大きな組織の上に立つ人間って、どこか常識外れというか、時には道徳や倫理を蹴らなくちゃいけないこともある(もちろん、法を犯さない程度、が大前提で)それが出来るかどうか、が、正にこの道における「才能」だ。彼にはそれがなかった。

「僕はただ、普通に会社を運営したいんだよ」としきりに言っていたのも、人としては至極真っ当だけれど、あの会社、あの家でそれが出来るだろうかと言われると、なかなか頷き難い。

こう言っては悪いけれど、彼は本当に、生まれる家を間違えられたんだなぁと、ただただ気の毒になる。

「兄のせいで気を病んで薬物依存になった」という過去の、何と悲しいこと。

きっと、兄さんのせいで学校では敬遠されていただろうし、友達なんて出来なかっただろうし、日常的に暴力振るわれても、親も何もしてくれなかったんだろうな、というところまで考えられてしまって、余計に悲しい。

 

法廷でヴィンチェンツォの隣に座った時がたまらなかった。

会長というでかい「椅子」を蹴って、彼は、クムガファミリーたちと並んだ、本当の兄さんの隣の小さな「椅子」を選んだ。

あぁ、やっと居場所が見つかったんだね…。

ファミリーのみんなは、まあしばらくはネチネチ言うだろうけれど、でもきっと彼を受け入れてくれる人たちだし、これから빈이형の隣で勉強して、何か、今まで思いもよらなかった分野の才能が目覚めるかもしれない。

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(ビハインドが尊すぎて余計無理しんどい)

 

だから、死ぬなよおおおおおおおおおおお(滝涙)

そりゃ序盤から、「怪物に殺されそうランキング」トップ3入ってたけどさぁ〜〜〜あの時と今は違うじゃああああああん!!!

トドメのアレですよ。

잘했어, 내 동생.

泣 か す な!!!!!!!!(滝涙)

내 동생て………내 동생て………泣くわこんなん!!!!!

もう、最期に何が出てきても泣くしかなかったけれど、よりにもよって「ありがとう」を連呼するもんだから、余計情緒がズタボロになった。30年前後の人生の、ほんの一瞬だったけれど、最後の最後に、本当にうれしい時間だったんだね。

 

ただ、冷静に考えれば、なるべくしてなった最期なのかなぁとも思う。

あのまま生き残ったとして、操られていたとはいえ当事者には間違いないので、ある程度(それも決して少なくはない)の責任は免れないし、彼の性格を思うと、兄の悪事のすべてを隠し通していくことなんてできるだろうか。もし兄の本性が露見すれば、「あの兄貴の弟」として見られて生きなくてはいけない。

負って然るべき責め苦だけれど、「責任取って帰って来い!な!」と送り出してあげるには、彼はちょっともう全身ぼろぼろすぎる。

何より、빈이형と一緒にいられないしね。

そう思うと、この結末は、彼にとっては救いだったのかもなぁなんて思う。

 

とにかく、最近観た中で、いちばん感情移入した、いちばんの激重感情が生まれてしまったキャラクターだった。来世は絶対に幸せになってほしい。

そしてもう、認めざるを得ないでしょう。

クァクドンヨンさん、好きです。

(「サイコだけど大丈夫」感想後編も併せてどうぞ)

 

 

さて、ここからは、今作のちょっと惜しかったポイントの話。

 

 

ヴィンチェンツォ強すぎ問題

これです。

ちらっと前述したけれど、とにかくヴィンチェンツォが強すぎる。

 

ただ、これは脚本が悪いとか、構成としてどーなのとかいうことではなく、そらそうなる案件なわけで。

だって、マフィアなんだもん、彼。しかも下っ端とか新入りとかじゃなくて、界隈ではある程度有名な凄腕。

なぜ現在、イタリアがマフィアの王国になっていないのか、支配されていないのか。それは、これまでの闘いの歴史を踏まえて、マフィアとの共存の仕方を探し出し、絶妙なバランスの上で成り立っているから。(もちろん、明日崩れるかもしれませんが)

韓国にはそれがない。マフィアの扱い方なんて知るはずもない。

言うたら、「イタリアから来たマフィア」という設定の時点で、もう誰も勝てないことが確定している。

それが、ハラハラドキドキ感にブレーキかけてしまったかなという印象。

 

肉体的な強さだけならまだしも、頭まで良い。

敵側にしてやられたか…!と思ったら後々、

「実はその数時間前、ヴィンチェンツォが手を回していて…」

みたいなパターンがあまりにも多すぎる。っていうか、ほぼ全部。

彼が予見できなかったのって、母ちゃんのことくらいでは?(むしろそれ、いちばん警戒できただろ…とは思うけれど)

ハンソクのサイコっぷり然り、「ヴィンチェンツォすげぇ」も、そればっかひたすらに見せられると、慣れてきちゃう。

 

 

負けを自覚していないのか問題

前述の通り、彼がマフィアであるという時点で、マフィアとは無縁に生きてきた敵側の皆さんに勝ち目などない。ので、ありとあらゆる方面でボロクソに負けてしまうのは、ある種仕方がないこと、なんだけれど。

 

それなのに、なぜそんなでかい態度が取れる???

「ヤツはあなたが思うより残酷だぞ」だの、

「これがヤツの本来の姿だ」だの、

脅してくれる人はちらほらいて、それ相応の仕打ちを受けてきたにも拘らず、なぜそこまで余裕綽々でいられるのだろう。

 

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特にお前な、チェ・ミョンヒ。

襲われたらヒィヒィ言うし、他人の失敗(半分くらいはなすりつけ)にはギャンギャン喚くくせに、作戦は尽く破られて?全部攻略されて?

ちゃんと成し遂げたことと言えば、超序盤の父さん殺しの命令くらい?あと何が成功したっけ?負けすぎてて忘れた。

それなのに、永遠にでかい態度取り続けているのが謎すぎて…。彼女がそういう姿勢でいればいるほど、敵陣営が安っぽく見えてきてしまって、何か行動を起こしても、「どうせ破られるやろ」という風にしか思えなくなっていった。

 

元トップ検察官とは何ぞや。せめて、法律のとんでもねぇ使い方してくるとか、とんでもねぇ抜け穴見つけてくるとか、せめて法律屋らしい手段で1回くらい勝ってくれよ。

でないと、ハンソクが彼女を重宝する理由が全く見つからない。

こんなに役立たずなのに何で一緒にいるの?真っ先に殴り殺されそうだけど。対外関係的にも、殺しても特に悪影響ないし。

 

そもそもチェ・ミョンヒ、キャラクター以前に、人として本当に嫌いなタイプすぎて、悪役だからとかじゃなくて、最後まで本当に嫌いだった。

(もしそれを狙ってお芝居されてたのだとしたら、完全に自分の負け。参った。嫌いです)

 

てか、ごめん。別件なんだけれど、最後、ハンソク出てきたのはどういう手段だったん?その過程は詳細省かないでよ。急にファンタジーすな。

 

 

他にも、

「後付け設定多すぎやろ」(「俺は元看護師だ!」はさすがに笑ってしまった)とか、

「ヴィンチェンツォのフラッシュバックは何だったん」とか、

「まだ餌もあげてない内から鳩が懐くかい」とか、

まあちょっとしたツッコミはあるけれど、本筋にはあまり関係のないことなので、ここまでに留めておきます。

 

 

 

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そんなわけで、楽しませていただきました!

たまにはこういう、ファンタジーとはちがう意味でちょっと現実味はないけれど、エンタメに極振りした現代物もいいですね。

 

そう言えばこれ、来月ミュージカルやるんですよね。日本で。

派手な戦闘とか作戦とか多いから、ミュージカルには結構向いてると思う。

ただ、ただでさえ1話1時間半弱なのに全20話もあるのを、(休憩を差し引いて)最大でも3時間が限界だと思うんだけれど、どうするんだろ…。

ちょっと興味はある。

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(この辺、キャストさんそっくりでびっくりしちゃった。特にピアノ院長、激似で本人かと思った)