日常/非日常

びっくりするほど雑食

アニメ「呪術廻戦」感想(2期17話から)

怒涛の渋谷事変、続きです。

 

 

※放送済みの内容にがっつり抵触します。未視聴の方はお気を付けて。

※大前提として、すべてが最高の回でした。

が、自分の文章力の都合もあり、前回以上に、特に印象的で、あれこれ論じたい回に絞って書いています。触れていないからと言って、「つまらなかった」というわけでは決してありませんので、誤解のないよう。

 

 

 

「霹靂 弐」

みんな大好き摩虚羅、遂に登場…!

原作でも描写されていたけれど、やっぱり登場時に式神が勢揃いしているの、別格感があってとても良い。玉犬の遠吠えで、神聖さマシマシ。

 

それにしても強い。強すぎる。

でも、“悪意”的なものは感じられない分、やっぱり式神なんだなと。全身白のビジュアルが、「こんだけ凶暴でもあくまで“式神”ですよ」ってところを、上手く補完してくれていたように思う。どこか“精霊”っぽさすら感じた。(単に花御に似てるからってだけかもしらん)

存在が散々匂わせられていた上、合理性重視キャラに見えた伏黒が、実はちょっと捨て身すぎるというか、あるラインを越えるとすぐ身投げしようとしてしまう、めちゃくちゃ危なっかしい子だったということが、ここではっきりと開示されるわけだけれど。

それにしたって君、いくら東堂がむちゃくちゃだからって、あそこで摩虚羅を選択肢に出すのはおかしいやろ。(まあ東堂が100悪いんだけれど)

 

そして遂に…遂に、この瞬間が来てしまった…という、ラスト。

散々「人を殺したくない」を掲げてきて、改造人間ですら未だに躊躇する虎杖にとって、骨すら残らない大量虐殺というのは、あまりにも重い。おそらく世間から、「こいつが犯人だ」と咎められることはないのだろう(※原作時点でも、そういう描写がないので、そうなってはいないのだと解釈しています)し、事情を知る人のほとんどが「君のせいじゃない」と言ってくれそうだけれど、それはそれで辛い。

地面を引っ搔いている時、微かに聞こえる気がするんだよな…爪の削れる音が…。

 

このシーンでの「SPECIALZ」投入、賛否両論ありますが、個人的にはウーン派。(スマン、曲は当然大好きなんだけれども)

特に海外勢からウーンが多いようで、「せっかくの名演技なのに/雰囲気に浸りたいのに、ノリノリの曲調が厄介」とのこと。わかる。

「いや歌詞が重要なんだろ」という意見はご尤もだし、だからこそ、この状況と歌詞とを照らし合わせて楽しめるのだろうけれど、逆に言うと、ここで歌詞を意識する余裕のない日本語圏外勢や、自分みたいな雰囲気でポップスを聴く輩には、蛇足的に感じてしまうのでしょうね。

特にこの曲は音が多いので、せめて、セリフには被らないでほしかったなぁと思ったり。

地上波でしかやってないのならまだしも、配信で全世界から観られる作品になってしまっているので、こういうタイプでの意見の分裂も起こってしまうのだろうと思う。

(ただ、だからって「海外向け」とか「海外にも合わせて」とかで作品をつくる必要は、一切ないと思う。そもそも原作もその掲載誌も、日本のものなんだから。

わざわざ海外に媚びて、こういう意見を“反映”する必要はないけれど、「あぁそういう見方もあるのね」と、1つの表現の引き出しとして、いつかのために取っておくことが、海外展開の1つの利益だと個人的には思う)

 

 

「理非」

冒頭からいきなりの虎杖イジメで、おばあちゃん(※筆者)は顔がひん曲がるほど苦しかったです…。

宿儺「お前がいるから人が死ぬんだ」

ちげぇよ、オメェだろうがよ!!!!!!!!!

 

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虎杖の、呪術師としての大きな成長過程の支えになってくれた七海

芥見先生曰く、当初は順平編で退場予定だったとのことだけれど、むしろ、あれを一緒に乗り越えて、最初に「君も呪術師だ」と認めてくれた人だからこそ、ここでの退場に重みが増したのだと思う。

 

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この後から数話にかけて、メインイベントたる真人戦が始まるわけですが…。

「お前は!何なんだ!真人!」

「でかい声出さなくても聞こえてるよ!虎杖悠仁!」

これが。すごかった。何と言うか…すごかった。

何か、上手く言えないけれど、虎杖のは「蓄積」をすごく感じた一言だったし、真人のには「開放」を感じた。ウーン、上手く言えない。

ただ、この時点でもまだ真人に「お前は何でそんな簡単に人を殺すんだ」みたいな疑問が浮かぶままの虎杖には、(後々のことも踏まえて見ていると余計に)そうじゃない感と言うか、キツい言い方だけれど、「まだそんなこと言ってんのか」と思ってしまうところがあった。

 

 

「理非 参」

凄まじい回だった。

「凄まじい」という表現が、正にそれ、という感じ。常に心臓が痛くて胃が痛くて。特に、お芝居の殴り合いみたいな回だった。

個人的に、脹相戦、宿儺VS漏瑚と並ぶ優勝回でした。

 

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虎杖…嗚呼……俺たちの可愛い可愛い虎杖、どうしてここまで……。

一応展開は知っていたし、きっと「自分だけ死ね!」よりもっと来るだろうなと覚悟して構えていたはずなのに、実際に見せられるともう…ダメだった。

顎が震えて唇が震えて、喉がぎゅうっと締まっちゃって、上手くしゃべれていないのに、口は勝手に動いて止まらない、そんなかなりリアルな感覚を見せられた。

www.oricon.co.jp

榎木くんのことだから、もしかしたらここも…と思ってたら、やっぱり、うずくまって録ってたんですね)

どうしてこの子は、一瞬足りとも人のせいにしないんだろう。「宿儺がたくさん人を殺した」のはそうだけれど、確かに宿儺は君の身体を使ったけれど、宿儺を憎むことはあっても、どうしてその所業の半分を自ら背負ってしまうんだろう。誰よりも本人が永遠に自分を赦せないでいるのが、あまりにも辛い。

 

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だから待ってたよ、東堂〜〜〜!!!!

来るとわかっていても、あのBGMを背負って現れた巨体に、思わず声が出てしまった。

今回で、東堂って本当に、キャラクターの中でも唯一無二の“光”だなぁとひしひしと感じた。

メンタル完成形の七海でも、最強の五条ですら、基本的にみんな、「呪術師であること」で「こういう感情は邪魔になる」「こういう考え方は捨てろ」、極めつけに「呪術師は幸せにはなれない」という、マイナスの方向で精神が落ち着いている。イカれてる」という表現がよく出てくるけれど、あまりポジティブな意味で言っているとは感じられない。

東堂だけだと思う、「呪術師であること」に、ここまで前向きに誇りをもてているのは。

個人的には、夏油が至れなかった理想の完成形が、東堂なのかもしれない、と感じたりもする。

野薔薇にもその片鱗はあるかも。まだ途上だけれど、少なくとも向こうとしている精神の方向は、東堂に近いと感じる)

 

っていうか、相変わらずつっよ〜〜〜!!!

いつ見ても強いし、バトルシーンとして面白い、不義遊戯(この当て字で「ブギウギ」と読ませるワードセンス、最高に好き)

術式としてかなり有用なのは大前提として、それでも、ただ使えばいいってワケでもない。対象が無機物だったり生物だったり、あれこれ変わる辺り、「これとあれを入れ替えて…」ってのも、逐一考えて打ってるわけだし、入れ替わった直後のことまで考えなくちゃいけない。相当の頭の回転が必要だと思う。

とは言え、これってどう見ても“サポート特化術式”だし、真に使いこなすには肉体も必要不可欠。ウーン、さすが全高専内トップランカー。1ミリの隙もない。

 

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さて、君だよ。

あんなに汚くぎゃあぎゃあ喚き散らして、声が引っくり返ってもお構いなしで、喉潰れるんじゃないかってくらいのCV. 島崎信長は、初めて聞いたもので…びっくり。

楽しかっただろうなぁ、ここのお芝居。お芝居と呼ぶのも躊躇うくらいの、全力のお芝居だった。信長さんのお芝居への姿勢に、敬意すら感じました。

「ちょっと叫びすぎじゃない?」「何言ってるかわかんない」というご意見もあるみたいだけれど、個人的には、“敢えて”そういう指示がされているのでは?と感じた。虎杖の絶望然り、ハイになりすぎて感情が止まらない、「聞かせるため」ではなく「しゃべりたい」からしゃべっている、という方向性なのではないかな、と。あくまで憶測に過ぎませんが。

 

フルボッコタイムの真人の言は、虎杖への最大火力の煽りではあるものの、言っていることは割と筋が通っているし、納得もできる。

彼の言う通り、渋谷事変での呪術師たちの敗因は、「全方位甘すぎたこと」でしょう。

認識の甘さと、情報共有の甘さ。

その上で極めつけに、「五条悟の身に何かあったら」がほとんど想定されていなかったことが、ダメだったと思う。いくら単騎こそが五条の本領発揮とはいえ、すぐに飛び出せる控え選手数名くらいは配備しておいてもよかったはずだ。

呪霊チームの、「呪霊なのに普通にしゃべれる」「呪霊なのに徒党を組んでいる」という、かなり上位の“ヤバさ”は察知していたはずなのに、追究もせず野放しにしてりゃ、こんなことにもなりまさァな。下調べをしっかりしておいて、その危険度がわかっていたら、前もって乙骨を呼び戻しておくこともできたかもしれない。

 

これは勝手な感想だけれど、おそらく両陣営の差になったのは、「明確な目標があるか否か」だったのではないかと思う。

呪術師たちの「呪霊を祓う」という行為は、あくまで“日常の一部”であって、“目標”ではない。真人たちを祓えば、世界中から呪霊が消え去り、平和でハッピーな世の中になる、というわけでもない。(無情…)

対する呪霊チームには、「新しい“人間”になる」という確固たる目標があり、しかもそれを全員が合意の上共有している。ここで呪術師たちをぶちのめし、あとに残った何の抵抗力もない非術師を消し去れば、彼らにとっての、平和でハッピーな世の中が出来上がるのだ。

ここが、渋谷事変での敗因の、更にその根本なのではないだろうか、と思った。

やっぱり、こういう時のマイノリティ側の情熱を、マジョリティ側が超えることは難しいのかも。

 

 

「変身」「変身 弐」

領域展開については、何も言うまい。

この展開のこのタイミングで、こんな笑うとは思わんやろ、普通。ありがとう。

 

「俺はお前だ」のところ、びっくりするくらい淡々としていてぎょっとした。あの、明るくて優しくて、いつも笑ってる虎杖のこんな声を聞くことになるとは…。

踏んできた段階としてはあまりにも過酷だけれど、でもこれこそ、虎杖悠仁の、呪術師としての覚醒なんでしょうね。

「お前を否定したかった」「でももう今は、ただお前を殺すだけだ」

呪霊を祓うことに、相手がどういうヤツか、なんて関係ない。ただ祓う。なぜ。呪霊だから。以上。

タイトルの「変身」は、当然真人の遍殺即霊体への進化を表しているのでしょうが、この虎杖の覚醒にもかかっているような気がしました。

でも、呪術師としてはまあ正解なんだろうけれど、手放しで「覚醒おめでとー!」と言えるかと言われると、ウーン…。もう、「おっぱっぴーで地球温暖化も解消!イイネ!」とか言う虎杖には、戻れないのかなと思うと…悲しい…。いや、そこは別か?ウーン、世界がどうにか収まらないことにはわからんな…悲しい…。

 

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お兄ちゃん爆誕、おめでとうございます。ありがとうございます。

当事者(虎杖)からしたら、数時間前に本気で殺し合っていた相手が、突然、何の説明もなしに兄貴(※生物としての種族がちがう)を名乗り始めた上、めちゃくちゃ全力で護りにくるとかいう、「幻覚」以外に説明がつかないくらい、意味わからん状況なわけだけれど。

でも割と真剣に、ここからの虎杖には、お兄ちゃんレベルですべて(文字通りすべて)を肯定してくれる存在がいないと、精神的にかなり危険なので、本当にお兄ちゃんがいてくれてよかった。しかも適度にボケてくれる(※本人は大真面目)から、多少気も緩むだろうしね。いやぁ、本当に光だな、脹相。

そしてもれなく、強い。相変わらず、赤血操術が万能。まさかそこに乗って、踏み台にして飛ぶとは。突然、親の仇(事実)みたいな勢いでフルネーム叫ばれて、完全上位互換の技見せつけられた加茂先輩カワイソ…。

 

 

「渋谷事変 閉門」

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おかえり、乙骨先輩…!

0から1年弱かな?たったそれだけの間に何があったんだと、深刻に心配になるレベルのやつれようで、比較する度に驚きますけれども。

まあでも、乙骨といい家入さんといい、力が強ければ強いほど、有用であればあるほど、使い倒されて、いろーんな呪霊=人間の負の感情と対峙させられるわけだから、やつれもするわな…。

バトルもどんどん参加していくし、ここからの活躍っぷりが本当に楽しみ…!

(この後のことも思いながらここ観ると、「“あの”乙骨が一生懸命演技頑張ってるんやな…」という、和んだ気持ちになる。とは言え、やることは一旦きっちりやるんですけれども)

 

ところで、個人的にずっと疑問なんですけれど、上層部って何なんですか…?

高専の教師でもない、御三家の者でもない。じゃあ、誰…?

呪霊は認知しているし、おそらく視認もできるのだろうけれど、術式はあるの?ないの?あるのなら、その上で戦場へ行かずに許されるほどの立場って何?ってなるし、ないのなら、ないのに“上層部”になれちゃう立場って何?ってなるし。任務の振り分け以外、何をしているのかも謎。

それに、五条は悪口ばーっか言うけれど、言うほど邪悪な存在だとは思えないんだよな…。

「虎杖悠仁は処刑すべき」って、別に私情ってわけじゃないしね。言うたら妥当な判断ではある。「そんなの虎杖がかわいそう!」って言うなら、じゃあ虎杖を殺さずに宿儺をどうにかする方法を出せっちゅー話なわけで。それができりゃ苦労はせんのよ。

大勢のために、少数を犠牲にする道を提示するしかない上の人間を、「酷い」と批判するだけの何もしない・できない大勢側の人たち、という現実の構図を表しているのだとしたら、風刺ゴリゴリすぎてびっくりする。でも、そういうの好き。

 

 

 

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そんな感じで、渋谷事変、思う存分楽しませていただきました。

とてもじゃないけれど、「はぁー!面白かったぁー!」とはならない、いい意味で後味の悪い閉幕でしたが、他作品ではなかなか味わえない感覚で、面白かったです。

この虎杖のラストカット、もちろん表の意味合いとしては、呪霊を呼ぶためのものなのでしょうが、暗喩としては、一本締めのようにも見えるなと思うのですが、皆さんはどのように解釈されましたか。

 

本当に毎回毎回、凄まじい情熱で魅せてくれた作品でした。

1期ももちろん面白くて素晴らしくて、だからこそ2期も観たんですけれど、1期以上に心を奪われた2期でした。1期をここまで超える2期って、なかなか難しいと思うので、そういう意味でも本当にすごかった。

それだけ、制作陣が作品を愛していて、尚且、我々ファンの情熱もしっかり汲み取ってくれていたのでしょうね。本当にありがとうございます。

 

そして、死滅回遊編。制作決定おめでとうございます!!!

まあよっぽどのことがない限り、やるだろうなとは思っていましたが、いざ公式に発表されるとなると鳥肌でした。

登場すらしていないのにトレンドに入ってしまった、禪院ドブカス直哉さんですけれども。どんな声になるんでしょうね~。個人的には、河西健吾さんに1票。遊佐さんはもちろんアリアリのアリですけれど、でも27歳の声ではないかなぁ…と思っちゃう個人的に)

楽しみにしています。もちろん、労働環境は改善してくれるんですよね!(圧)

 

 

さて、今夜は紅白で「青のすみか」特別映像付きを堪能してから寝ようと思います。

紅白観るのなんか、ウン年ぶりです。

それでは、皆様よいお年を!