日常/非日常

びっくりするほど雑食

「サイコだけど大丈夫」感想(後編)

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なるべく早く、とは何だったのか。10日経ちました。時間って早いんだなぁ。

それでは、後編です。

 

7/14 言い訳タイム

言いたいことはいっぱいあるのだけれど、どう書いても、あまりにも個人的な思想が強くなってしまうのと、物語本編の話から、長々と脱線してしまうので、一旦この状態で公開してしまいます。

本当はもっと書きたいのですが。これ以上まとめに時間をかけても、視聴の記憶は薄れていっちゃうし…。

また上手くまとまったら、後日追記しようかと思います。

 

 

 

三者三様の「子供」

この作品のメインテーマとして、「大人になれない子供」が、1話からどーんと提示されているが、それが全くの三者三様っぷりで面白かった。

 

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早くから自分が大人になるしかなく、なまじ“振り”が上手くなりすぎてしまったがために、中途半端な大人になってしまった、ガンテ

自分で成長する機会を早々に奪われ、奪った相手は無責任に消え、子供のままで生きる術しか知らず、それでいいとすら思っていた、ムニョン

大人として生きるにはどうしてもコントロールが難しく、必然的に子供のように生きるしかなかった、サンテ

 

ただ、この物語は決して、この3人を「大人にさせる」物語ではなかったと思う。

3人が、穴ぼこだらけの粘土細工だったとして、

穴に粘土を詰めてあげる必要はあるけれど、

穴ぼこで不格好だからって、全体の形を思いっ切り変えてしまうのはちがう。それじゃあ別物になってしまうから。

個人的には、作品を通して、大人になるということと、子供でなくなるということとは、イコールではないのだなということを感じた。

そこが、この作品のもつ「優しさ」の一端なのかなと思う。

 

 

あまりにも印象的すぎた3話ラスト

もうこれが。これがあまりにもすごくて。凄まじくて。

ここで一気に引き込まれた。

 


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(5:05辺り~)

 

演台での暴露も印象的だったけれど、個人的に心を刺されたのが、その後。

マイクを固く握りしめて、適当な節を歌いながら、夕日をバックに、踊るように跳ねるように暴れ回る姿。その笑顔。

 

何て苦しい「自由」なんだろう、と。

彼は今、ものすごく自由で、言うなれば「復讐」を成し遂げて、視聴者としては爽快に感じてもいいほどなのに。

なぜか、スカッとはさせてくれない。

大勢が彼を「見ている」中で、「僕を見てよ」「僕のことを見てよ」と歌い続ける虚しさ。どれだけ大衆の注目を浴びようと、誰かに憐みを与えられようと、いちばん「見て」ほしい人たちは、本当の意味では、彼を「見ていない」。

その証拠に、大衆たちは呆然と彼の演説を見ている(もしかしたら、その中のいくらかは彼に同情しているのかもしれない)けれど、家族は全員、彼を止める方に動いている。

(※もし家族の誰か、1人でもちゃんと見ている人がいたのなら、クローズアップされていたと思うので、「いなかった」のだと解釈しています)

 

そして、そんな悲痛な彼の叫びとは裏腹に、あまりにも美しく煌めく夕日。

韓ドラの「光の演出」がすごく好きだというのは、「オハル」でも感じたけれど、ここでもやっぱり、「光」が最高すぎた。

 

ガンテ視点では、1つの「憧れ」の姿として描かれている場面で、もしかしたら視聴者的には、良い印象のシーンだったのかもしれないけれど、

個人的にどうしても、晴れやかに見ることができなかった。

ガンテは彼に「自由」を見出して、憧れていたけれど、彼の自由は本当に「自由」なのだろうか。

「不出来だから」という理由1つで、家族に殴られて、無視されて、隔離されて。遂には本当に精神を病んでしまって。

その上で得た自由を、本当の「自由」と呼べるのだろうか。

 

この後母親にビンタされても、

「愛されてるってわかってたら、痛くないモンだよ」

なんて笑っていたけれど、それも、彼が「精神を病んでいる」という事実のせいで、どこか腑に落ちないというか。言ってしまえば、思い込んでいるだけにも見える。

(※この辺はちょっと、個人的に「家族」というものの「尊さ」みたいなのを、あまり感じていない人間なのもあって、穿った見方をしているかもしれません)

いろんなタイプの患者さんエピソードがあったけれど、彼が群を抜いて辛かった。

 

あまりにも印象的なシーンだった。

これを超えるものは、しばらく観られないんじゃないかと、真剣に思うほどに。

 

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クァク・ドンヨンさん、お顔を見た時は、「あ!『サムマイウェイ』のクソ彼氏だ!!!」という最悪な印象が飛び出してきてしまったけれど、本当にすんませんした。

紛うことなきイケメンの部類なのに、この役よく引き受けたなぁ。

でも、めっっっっっっっちゃくちゃ良かった。まだお若いのに、すごい役者さんだ…!

もうクソ彼氏の残像は消えました。これからは、アダムとお呼びします。

(てか、彼も「涙の女王」出るんだね!俄然楽しみ!!!)

 

 

印象的すぎる子役たち

そもそもがハイレベルな、韓ドラ子役勢だけれども、本作では子供の頃の体験が大きな役割をもつため、ただの「幼少期役」ではなく、1人のキャラクターとして、かなりの比重を任されていたように感じた。

それでも、大人俳優陣に全く引けを取らず、印象的な幼少期を見せてくれていた。

 

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この子の目が。目がすごい、本当に。

まず目の形とか色とか、その時点で完成されていたと思う。おぼろげで、そこを見ているようで見ていないようで、ちょっと怖さすら感じるのだけれど、でもどこか魅力的で、つい魅入ってしまうような。

いっそ、人間じゃない何かをも感じる。

これは持って生まれたものの上に、本人が、その使い方をよくわかっているのだろうなという印象だった。

めちゃめちゃ美人さんだし、特にこの雪景色が似合うこと。この、雪原に佇む彼女の画だけで、何か1つ物語が出来そう。

 

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とにかくお見事でした、ちびガンテくん。

「僕は僕のものなんだ」「兄さんのために生きるなんてイヤだ」「兄さんなんて死ねばいい」

と、顔をぐちゃぐちゃに歪ませて泣き叫ぶ場面。胸が痛まずにはいられなかった。

聞けば、既に売れっ子の有名子役さんなんですね。納得。

 

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本役のオ・ジョンセさんも大好評だったけれど、幼少期の彼もすごく良かった。

笑顔が本当に明るくて屈託がなくて。それが余計に、ガンテをもやもやさせるんだよなぁとも思ったり。

 

 

 

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(このポスターがいちばん好き~!素敵~!!)

 

そんなわけで、「サイコだけど大丈夫」、めちゃめちゃ楽しませていただきました。

視聴開始までかなり躊躇ったけれど、結果的には、観て良かったです。

 

日本のドラマは何年も観てないし、他の国のドラマもほとんど観たことがないので、比較はできませんが、

韓国ドラマはこういう、穏やかな人間ドラマが本当に上手いなぁと思います。

あと、スリラー・ホラー系の大胆さもすごいと思う。観たことはないけど。怖いのやだもん。